第13回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 / 日野原賞受賞
日時 | 2022年6月12日 |
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場所 | パシフィコ横浜(ハイブリッド開催) |
発表者 | 藤井 浩太朗 |
日野原賞受賞演題:
菌血症の診断における医師の予測の有用性
【背景】
菌血症の見逃しは致命的となり得るため、血液培養は過剰に実施される傾向がある。真に血液培養が必要な患者を同定するための予測モデルがいくつか報告されているが、実臨床ではあまり活用されていない。その理由として、医師が自らの予測で十分であると判断している可能性がある。しかし、その診断精度は明らかではない。
【目的】
菌血症の診断における医師の予測の診断精度について、既存予測モデルと比較し評価すること。
【研究デザイン】
診断精度研究
【対象、セッティング】
2017-2019年に本邦の急性期病院2施設の総合診療科に入院した16歳以上の患者で、血液培養(2セット以上)を施行された患者。
【介入または主たる要因】
入院時に菌血症の予測確率(0-100%)を入院担当医が評価したものを医師の予測とした。
【主たるアウトカム指標】
菌血症の有無は、血液培養の結果を2名の感染症専門医が独立して判定した。医師の予測や既存予測モデルに含まれる情報はマスクした。
【統計解析方法】識別能(Area under the curve (AUC)、カットオフ値10%における感度、特異度、陽性・陰性的中率)、および較正能(calibration plot)を用いて、医師の予測と既存予測モデルとの診断精度を比較した。
【結果】
対象患者2,014名中、292名 (11.9%) が菌血症と診断された。医師の予測の識別能は、AUC 0.79、感度93.8%、特異度27.5%、陽性的中率18.0%、陰性的中率96.3%であり、既存予測モデルと比べて、陽性的中率は低く、陰性的中率は高かった。較正能の評価では、医師の予測は菌血症の可能性を過大評価する傾向が認められた。
【結論】
菌血症の診断において、医師の予測は既存予測モデルと比較して過大評価の傾向があり、見逃しは少ないが、過剰な血液培養の実施につながる可能性が示唆された。
http://www.shirakawa-ac.jp/news/2022/06/26/1138/
http://bit.ly/3IKT4n9