日本臨床疫学会 第五回学術集会
日時 | 2022年11月13日 |
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場所 | 早稲田大学 国際会議場 |
発表者 | 宮下淳 |
Young Investigator Award候補演題:
日本版アドバンス・ケア・プランニング:修正デルファイ法を用いたコンセンサスに基づく定義及び行動指針
抄録:宮下淳1 , 清水さやか2, 白石龍人3, 森雅紀4, 木澤義之5, 森田達也4, 福原俊一1,2,6, 山本洋介7
1 福島県立医科大学 白河総合診療アカデミー
2 京都大学大学院 医学研究科 地域医療システム学講座
3 神戸大学附属病院 緩和支持治療科
4 聖隷三方原病院 緩和支持療科
5 筑波大学 医学医療系 緩和医療学
6 Johns Hopkins University
7 京都大学大学院 医学研究科 医療疫学分野
【背景】
家族中心の意思決定に重きをおく日本のような社会において、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning, ACP)の概念フレームワークは確立されていない。本研究の目的は、日本の社会に適応したACPに関するコンセンサスに基づく定義及び行動指針を形成することである。
【方法】
2020–2022年に56名の学際的な専門家集団による修正デルファイ法を行い、日本のACPに関する定義、内容、対象者、行動指針に関する項目を開発した。医師(30名)、ヘルスケア及び生命倫理研究者(10名)、看護師(6名)、介護支援専門員(3名)、社会福祉士(3名)、法律専門家(3名)、チャプレン(1名)で構成された。先行研究レビュー及び専門家へのインタビュー(第1)、項目適切性評価調査(第2及び4)、テレビカンファレンス(第3及び5)、患者/患者家族へのインタビュー(第6)、最終合意形成(第7)の7つのラウンドを行った。コンセンサスレベルを「リッカート尺度(最低点1–最高点9)の7–9点の割合が70%以上」に設定した。
【結果】
29項目(7-9点の割合:72–96%)が最終的にコンセンサスレベルに達した。ACPは、「必要に応じて信頼関係のある医療・ケアチーム等の支援を受けながら、本人が現在の健康状態や今後の生き方、さらには今後受けたい医療・ケアについて考え(将来の心づもりをして)、家族等と話し合うこと」と定義された。この定義及び行動指針には、未来の心づもりを考えたり、親しい人に伝えたりすることをためらう人に対する配慮と支援が内包された。
【結論】
個人の自律的な意思決定は周囲の親しい人々によって励まされ、支援されるという概念のもと、日本の文化に適応したACPに関するコンセンサスに基づく定義と行動指針が形成された。この定義及び行動指針によって、日本だけでなく家族中心の意思決定に価値をおく他の社会においてもACPをさらに広めていくことを容易にする可能性がある。