実績

第32回 日本疫学会学術総会

日時 2022年1月26日-28日
場所 WEB開催
発表者 藤井浩太朗、竹島太郎、高田俊彦、矢野徹宏、白石龍人、相田雅司、鈴木龍児、宮下淳、東光久、 福原俊一

演題名:高齢者の尿路感染症に対する尿pHの診断性能

藤井浩太朗(1)、竹島太郎(1)、高田俊彦(1)、矢野徹宏(2)、白石龍人(3)、相田雅司(1)、鈴木龍児(1)、 宮下淳(1)、東光久(1)、福原俊一(1)(4)
1 福島県立医科大学白河総合診療アカデミー
2 福島県立医科大学救急医療学講座
3 神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科
4 京都大学大学院医学研究科地域医療システム学講座


【背景】
高齢者の尿路感染症は典型的な症状を呈しにくく、無症候性の細菌尿も散見されるため、診断困難な場合が多々ある。尿pH高値と尿路感染症との間に関連があるとの報告があるが、その診断性能は明らかではない。

【目的】
高齢者の尿路感染症に対する尿pHの診断性能を検証する。

【方法】
研究デザインは、過去起点コホート研究である。組み入れ基準は、2015年4月1日から2018年3月31日の期間に白河厚生総合病院に菌血症を疑って入院した65歳以上の症例とした。菌血症を疑う患者の定義は、血液培養を2セット施行し、熱源精査としてCTを撮像されているものとした。指標検査は入院時に測定した尿pH (基準値6-6.5)で5-9を0.5刻みで測定される。尿路感染症の参照基準は、臨床経過をもとに2名の医師が独立して判定し、判断が分かれた場合には協議して決定とした。診断精度はArea under the Curve (AUC)、感度、特異度、尤度比、陽性的中率、陰性的中率を算出した。欠測値は除外し、Stata15を用いて解析した。本研究は白河厚生総合病院の倫理委員会の承認を得て実施した(HAKURIN 17 – 016)。

【結果】
組み入れ基準を満たした558名のうち、尿培養検査のない68名、尿pHが欠測していた16名を除外し、474名を解析した。尿路感染症と診断された人は70名 (14.8%)であり、尿pHの中央値は6 (4分位範囲 5.5 – 7)であった。一方で、尿路感染症以外の診断がされた人の尿pHの中央値も同様に6 (4分位範囲 5.5 – 7)であった。AUCは0.51であり、カットオフをpH5.5とした場合の尿路感染症に対する感度は97.1%、特異度は5.7%、陽性尤度比は1.03、陰性尤度比は0.5、陽性的中率は15.1%、陰性的中率は92.0%であった。カットオフをpH8とした場合の感度は5.7%、特異度は88.9%、陽性尤度比は0.41、陰性尤度比は1.02、陽性的中率は8.2%、陰性的中率は84.5%であった。

【結論】
尿pH値は、AUCの結果から識別力はなく、尤度比は検査後確率に大きく影響しないため、高齢者において尿路感染症の診断に有用とは言えない。